シラバス参照/View Syllabus |
科目一覧へ戻る/Return to the Course List | 2022/08/26 現在/As of 2022/08/26 |
開講科目名 /Course |
トランスナショナル文化特殊講義(パフォーマンス研究)/SPECIAL LECTURE ON TRANSNATIONAL STUDIES |
---|---|
開講所属 /Course Offered by |
外国語学部交流文化学科/FOREIGN LANGUAGES TOURISM AND TRANSNATIONAL STUDIES |
ターム?学期 /Term?Semester |
2022年度/2022 Academic Year 秋学期/FALL SEMESTER |
曜限 /Day, Period |
木5/Thu 5 |
開講区分 /semester offered |
秋学期/Fall |
単位数 /Credits |
2.0 |
学年 /Year |
2,3,4 |
主担当教員 /Main Instructor |
高橋 雄一郎 |
教員名 /Instructor |
教員所属名 /Affiliation |
---|---|
高橋 雄一郎 | 交流文化学科/TOURISM AND TRANSNATIONAL STUDIES |
授業の目的?内容 /Course Objectives |
8月20日にシラバスを改訂しました。『きらめく星座』(1985年の演劇作品)を題材に戦前の日本社会や天皇制について考えるという点は変更ありません。 日本政治が「右傾化」しているという言い方を聞いたことはありませんか。1999年「国旗国歌法」制定、2000年石原慎太郎(当時、東京都知事)による「三国人」発言と非正規滞在外国人の取り締まり強化など、一連の動きが皆さんの生まれたころに起きています。そして2006年、安倍晋三が政権の座に就く(第1次安倍政権)と教育の憲法とも言われる教育基本法が改訂され、愛国心(国と郷土を愛する態度)が強調されました。そして2012年から8年続いた二度目の安倍政権の下で右傾化は加速します。歴史認識では、南京虐殺や慰安婦問題など旧日本軍の残虐行為が矮小化され、アジアへの侵略や植民地化が正当化されました。安倍晋三は2013年、現職の総理としては小泉純一郎以来7年ぶりに靖国神社に参拝をしています。安倍政権と自民党は、憲法改正に向けた圧力を高めていますが、改憲により日本が戦争のできる国となり、天皇を頂点とする国家体制の下で自由や人権が制限されることが懸念されます。こうした右派の主張は、政治団体「日本会議」「神道政治連盟」とつながりあり、どちらの団体も国家神道/天皇制を軸とした戦前思想への回帰を主張しています。安倍/管/岸田政権では閣僚のほとんどが、これらの団体を支持する議員連盟に所属しています。 右傾化はポピュラーなレヴェルでは、嫌韓本の流行、ネトウヨ、ヘイトデモへなどに見てとることができます。また「日本スゴイ」系のテレビも日本人の卓越性と他民族に対する優越の強調により自己満足的なナショナリズムを煽っているといえるでしょう。 右傾化する政治家たち、嫌韓や反中に走る人たちには、戦前?戦中の日本を「美しい国」として理想化する傾向があります。しかし戦前?戦中の日本は国家の下に個人が犠牲にされ、言論?行動の自由が著しく制限された時代でした。この授業は、20世紀後半の日本を代表する劇作家の一人、井上ひさしの『きらめく星座』を読み、1985年初演の舞台をヴィデオで鑑賞することで、戦前?戦中の日本が右派の政治家やネトウヨの投稿者たちの夢見るような、回帰を望むべき時代?場所ではなかったことを検証することを目的としています。 作者の井上ひさし(1934-2010)は子どものときにこの時代を体験しています。『きらめく星座』は、1940年から41年(昭和15/16年)にかけて、浅草の架空のレコード屋さん一家に降りかかる出来事をミュージカル仕立てに描いた戯曲です。いわゆる軍事歌謡や軍歌がふんだんに取り込まれていますが、それらは表題になっている「きらめく星座」(歌:灰田勝彦、1940)、また劇の最後で主人公たちが熱唱するジャズのスタンダード?ナンバー「青空」(My Blue Heaven, 1928)の二曲に対置されて、1937年に始まり長期化?泥沼化した日中全面戦争から、米英を敵とした太平洋戦争へと傾斜する軍国日本を、音楽的に映し出していきます。 この戯曲には隣組、回覧板、国防婦人会、慰問袋、白衣の勇士、防空演習、ラジオ体操、軍人勅諭、ご真影など、軍国日本のイデオロギーを人々の心に刷り込み、相互監視社会を作り上げていった、さまざまな儀式/装置/パフォーマンスが登場しますので、それらを通して戦前社会の世相を覗き見ましょう。 なお、授業時間に余裕があれば、井上ひさしの次の世代の劇作家、平田オリザ(1962-)の代表作『ソウル市民(1989)』を鑑賞します。1919年に朝鮮で起きた日本植民地からの独立運動、「3.1運動」を題材にしています。時間がなければこの作品は来年、この授業で扱います。 (余白がないので次の欄に続けて書きます。) |
||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
授業の形式?方法と履修上の注意 /Teaching method and Attention the course |
(前の欄からの続きです/履修上の注意などは次の欄に書きました。) 私は天皇制に反対の立場を取りますが、このことは天皇制賛成の方の授業参加を拒むものではありません。賛成の方も反対の方も、授業では自由に意見を交換してください。また賛成の発言、課題の提出が、成績評価で不利になることはありません。私が天皇制に反対の理由は以下の3点に集約できます。私の考えは授業開始前に皆さんに知っていただきたいと思います。 1. 天皇の人権が奪われていること。天皇家の人たちには自分の考えを表明する自由も、職業選択の自由も、信仰の自由も何もありません。結婚相手も自分だけでは決められません。「天皇を辞める」自由もおそらくないでしょう。「親の職業を継ぐ」世襲制はとうに廃れています。天皇家に生まれたという理由だけで、人から自由と権利を奪うことができるでしょうか。もし、国家に象徴が必要なら、他国の大統領のように、本人の承諾を得て、民主的な方法で選べばよいのです。 2. 1868年の明治維新から1945年の敗戦まで、日本は天皇を長と頂く軍国主義の下で、近隣のアジア太平洋地域を侵略、植民地化しました。天皇のために殺すことは正義であり、天皇のために死ぬことが最大の美徳でした。今、平和憲法を改悪し、天皇を国家元首に、自衛隊を日本軍にしようとする勢力が力を増しています。天皇という存在が再び政治的に利用されないためには、天皇制を廃する、という選択が正しいでしょう。 3. 「神アマテラスの子孫を天皇に戴く国家」という神話は、日本人の民族的同一性や、優越性を強調するのには好都合です。しかし現在、人の移動、移住は飛躍的に増大しています。日本に暮らす海外ルーツの人口は今後も加速を続け、市民権を取ろうとする人も増えるでしょう。そうした「海外ルーツの日本人」に単一民族の神話は歓迎されるでしょうか。多様な民族的ルーツ、言語、宗教、伝統を包含するこれからの社会に、万世一系の天皇は阻害要因になるだけです。朝鮮半島出身者、アイヌ民族、部落民などは、歴史的に天皇を頂点に戴く社会から排除され、差別されてきました。「日本人」対「非日本人/外国人/他者」という二項対立的な思考から脱却するためには、天皇制はない方がよいのです。 |
||||||||||
事前?事後学修の内容 /Before After Study |
授業の連絡、資料の配付にはmanabaを使用します。初回の授業前に必要な予習もあるので、履修登録をしたら必ずmanabaを開いて確認してください。 授業はディスカッション形式です。受講生にはディスカッションへの積極的な参加が求められます。 また、毎週、クラスのフェイスブック?グループに授業へのフィードバックを投稿していただくことになります(フェイスブックへの参加方法は初回の授業でお話しします。)。 可能であれば、教室の外に出て、戦中戦後の暮らしについての展示をしている「昭和館」、傷痍軍人についての展示の「しょうけい館」(どちらも国立の施設です)など、課外授業として見学に行くことも考えています。 次ページの授業スケジュールは仮のものです。最初の授業で改めて提示します。 (事前)次回の授業内容について予習し、背景となる歴史や社会状況についても調べ、問題点や質問事項を整理して授業に臨んでください。 (事後)授業後は授業中のディスカッションでは解決できなかった疑問、自分の意見などのフィードバックをお願いします。クラスのフェイスブック?グループに投稿をお願いします。 |
||||||||||
テキスト1 /Textbooks1 |
|
||||||||||
テキスト2 /Textbooks2 |
|
||||||||||
テキスト3 /Textbooks3 |
|
||||||||||
参考文献等1 /References1 |
|
||||||||||
参考文献等2 /References2 |
|
||||||||||
参考文献等3 /References3 |
|
||||||||||
評価方法 /Evaluation |
ポートフォリオ(毎回のフィードバックを含む)100% ポートフォリオの作り方は、授業中に説明します。 |
||||||||||
関連科目 /Related Subjects |
表象文化論(春学期?火曜日4限) | ||||||||||
備考 /Notes |
自民党の憲法改正草案については以下を参照 https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf https://www.jimin.jp/kenpou/proposal/ |
||||||||||
到達目標 /Learning Goal |
従来の科目では扱ってこなかったトランスナショナル文化に関する特定の専門知識を習得し、そこにおける現状および課題等について分析を行い、見解を提示できるようにする。 |
回 /Time |
授業計画(主題の設定) /Class schedule |
授業の内容 /Contents of class |
事前?事後学修の内容 /Before After Study |
---|---|---|---|
1 | イントロダクション | 授業の進め方 井上ひさし『きらめく星座』の背景 |
|
2 | 第1幕 |
1940(昭和15)年 明治節 |
|
3 | 第2幕 |
1941(昭和16)年 天長節 |
|
4 | 第3幕 |
1941(昭和16)年 12月7日の夜 |
|
5 | 『きらめく星座』 |
ふりかえりのディスカッション |
|
6 | 天皇の儀礼 |
儀礼研究とパフォーマンス | |
7 | 宮中祭祀 | 宮中三殿で毎日続けられる祭祀 | |
8 | 天皇と学校儀礼 | 三大節、御真影と教育勅語 | |
9 | 即位の礼 | 天皇/臣民の位置関係 | |
10 | 大嘗祭 | 政教分離の問題 | |
11 | 平成天皇と宮中祭祀 | 昭和天皇との比較 | |
12 | 2024欧洲杯投注官网_沙巴博彩公司-官网平台の天皇家/秋篠宮家 | 何が変わり/変わらなかったのか | |
13 | 天皇制 | 天皇制廃止を論じることは可能か | |
14 | まとめ | 天皇制を考えるディスカッション |