『たむら市政だより』11月号 暖房器具のエネルギー別の効率性とCO?排出量比較について

『たむら市政だより』11月号 暖房器具のエネルギー別の効率性とCO?排出量比較について

『市政だより』11月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol.3「CO2排出量が少ない暖房器具はどれ?」における「暖房器具のエネルギー別の効率性とCO2排出量比較」は以下の通りです。

エネルギー(熱量)の単位には、J(ジュール)が使われます。1Wの電力で1秒間電流を流したときの熱量が1Jですので、熱量の値は熱量J=電力W×時間s(秒)で求められます。つまり、Jは消費された電気エネルギーの大きさ(電力量)を表していることになります。

日常では、電力量の単位に1Wh、1kWhが使われます。1Ws=1Jなので、1Wの電力で電流を1時間流したときの電力量(1Wh)は、1Wh=1Ws×60秒×60分=3,600J)であり、1kWh=1,000Ws×3,600s=3,600,000J=3.6MJ(メガジュール)となります。

また、私たちに馴染み深い熱量の単位にはcal(カロリー)があります。1calは、1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量です。1J=約0.239calですので、1Jは1gの水の温度を約0.239℃上昇させるのに必要な熱量ということになります。1kWh=3.6MJ≒860kcalです。

さて、各暖房器具が用いるエネルギー別の熱量1kWh当たりエネルギー単価、1円当たりの熱量、CO2排出係数などを比較したものが以下の表です。

エネルギー別単位当たり熱量、設定単価、エネルギー単価、1円当たり熱量、およびCO2排出係数

  単位 1単位量
当たりの
熱量[MJ]*1
1単位量
当たりの
熱量[kcal]
1単位量
当たりの
熱量[kWh]
設定単価
[円]*2
エネルギー単価
[円/kWh]
1円当たりの
熱量[kcal/円]
CO2排出係数
[㎏-CO2/kWh]*3
備考
[*2料金根拠]
電気 kWh 3.60 860 1.0 26.84 26.84 32 0.488 東北電力従量電灯Bの電力量料金120kWhをこえ300kWhまで36.46円-燃料費調整単価9.62円
灯油 36.49 8,717 10.1 113.27 11.17 77 0.244 民生用灯油価格調査(給油所を除く店舗、8月15日現在)店頭価格2039円/18L
LP
ガス
110.92 26,492 30.8 739 23.99 36 0.213 ?油情報センター「?般?売価格 液化?油(LP)ガス」 福島(20?価格-10?価格)より算出
都市
ガス
39.36 9,545 11.1 190.57 17.17 50 0.180 東部ガス?般契約B表(24m?をこえ102m?まで)2023年10月検針分

(出典)

  • *1 各エネルギーの熱量は、資源エネルギー庁「エネルギー源別標準発熱量?炭素排出係数一覧表」
    (https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/carbon.html)の「2018年度標準発熱量」を参照。
  • *3 CO2排出係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づく「算定?報告?公表制度における算定方法?排出係数一覧」の「別表1 燃料種別の発熱量」「別表2 燃料の使用に関する排出係数」「(参考1) 燃料の使用に関する排出係数(別表1×別表2×(44/12))」(https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/itiran_2020_rev.pdf)、および「電気事業者別排出係数一覧」(2024欧洲杯投注官网_沙巴博彩公司-官网平台5年提出用)(https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/calc/r05_coefficient_rev4.pdf)を参照して計算している。
    換算は以下の通り。
    1GJ=238,845.90kcal
    1kWh=3,600kJ=860kcal

表中のエネルギー単価(円/KWh)を見ると、1KWhの熱量を得るのに、電気だと約26.84円掛かりますが、灯油だと約11.17円で済むことがわかります。電気を暖房に使うのは、灯油より約2.4倍もコストが掛かります。またLPガスも灯油の約2倍のコストが掛かります。

また表中の1円当たりの熱量(kcal/円)を見ると、灯油77>都市ガス50>LPガス36>電気32となっています。このように、暖房に使うエネルギー源として、灯油が一番安く、都市ガス、LPガス、電気の順に、高くつきます。

また、CO2排出量係数(kg-CO2/kWh)は、都市ガス0.180<LPガス0.213<灯油0.244<電気0.488と、同じ熱量を得るのに電気が一番CO2排出量が多くなり、なんと灯油の倍も排出していることがわかります。

一方、エアコンは電気を熱に変える他の電気式暖房器具とは違い、「ヒートポンプ」という仕組みによって、冷媒ガスをコンプレッサーで圧縮することで集めた熱エネルギーを室外から室内に移動させています。これによってエアコンは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するよりも、ずっと高い効率で室内に熱エネルギーを送ることができます。ヒートポンプは日本が世界をリードする最先端の技術であり、1の電気エネルギーで3~7の熱エネルギーを生み出せるということです1。最新のヒートポンプエアコンは1の電気エネルギーで7の熱エネルギーを得ることができるので、電気の消費量は1/7で同じ熱エネルギーを生み出せることになります。

エアコンの性能を示す指標として、「COP(エネルギー消費効率)」や「APF(通年エネルギー消費効率)」というものがあります2

COPとはCoefficient Of Performanceの頭文字をとったもので、エネルギー消費効率は成績係数とも呼ばれます。とくに冷暖房器具の省エネ性能を表す際によく使われ、電力1kWを使ってどれだけの効果を得られるかという指標です。

2006年9月に改正された「省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)」でCOPと代わって省エネ指標の基準値と定められたことで、法改正後はエアコンではAPF表記が主流となっています。室温や外気の温度の影響を受けやすいエアコンではAPFの方がCOPよりも正確な値を得ることができるとされています。簡単に言えば、APFは電気エネルギー1でその何倍の熱を生み出せるかという指標であり、2020年のエアコンのAPFは最小値4.9~最大値7.5、平均で5.7という報告もあります。

例えば、APFが5.7だとすれば、単純に電気をそのまま熱に変える電気ストーブの5.7倍の暖房能力があることになります。電気1KWh当たりの熱量が860kcalですので、その5.7倍だとすると4,902kcalの熱量を生みだせることになります。1円当たりの熱量(kcal/円)で比べると、エアコンは183kcalとなり、灯油77kcal、LPガス36kcal、都市ガス50kcalと比較しても、ダントツで効率的な暖房ということになることがわかります。

  • 1 一般財団法人ヒートポンプ?蓄熱センター「ヒートポンプとは」(以下のURL)を参照。(https://www.hptcj.or.jp/study/tabid/102/Default.aspx)
  • 2 新電力ネット「エネルギー消費効率(COP)」(https://pps-net.org/glossary/21672)、新電力ネット「通年エネルギー消費効率(APF)」(https://pps-net.org/glossary/43470)を参照。

国際環境経済学科3年 日野原?丹野