『たむら市政だより』11月号 窓の断熱方法について

『たむら市政だより』11月号 窓の断熱方法について

『たむら市政だより』11月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol. 15「断熱で冬を健康に過ごそう」に記載した窓の断熱方法についてご紹介いたします。

冬季と夏季の熱の出入りについて

本文内で説明した冬季の熱の流出の具体的な割合について説明します。冬の暖房時は、外気温が-2.6℃と想定すると、屋根から5%、換気で15%、外壁から15%、床から7%、窓から58%の割合で熱が外へ流出していきます。また、夏の冷房時は外気温を33.4℃と想定すると、屋根から11%、換気から6%、外壁から7%、床から3%、窓から73%の熱が流入してきます。

図表1. 冬季と夏季の熱の流入と流出
冬季と夏季の熱の流入と流出

自分に合った窓の断熱方法を選択する

断熱方法にはリフォームにより、複層ガラスや断熱サッシに取り換えたり、内窓(二重窓)を設置するなどがあります。高い断熱効果を求めるとなると、費用もそれ相応に高くなっていきます。以下に、窓の断熱の費用と効果に関してまとめたものが図表2です。最も費用がかからない方法として①窓用断熱シートを貼る方法があります。しかし、⑤複層ガラスや⑥断熱サッシに変更することと比べると安くは済みますが、断熱サッシ、複層ガラスほどの断熱効果はそこまで見込めません。みなさんの生活スタイルに合わせた窓の断熱方法を選択するとよいでしょう。

図表2. 窓の断熱効果とそれにかかる費用
窓の断熱効果とそれにかかる費用

複層ガラスに取り換える

まず、リフォームにより、複層ガラスや断熱サッシに取り換える断熱方法についてご紹介します。

みなさんは複層ガラスをご存じですか?図表3のように、複層ガラスとは複数のガラスから構成され、ガラスとガラスの間に空間(中空層)をもたせたガラスのことです。ガラスの組み合わせや中空層の中の気体によってたくさんのバリエーションがあります。

ここでは複層ガラスの1つ「Low-E複層ガラス」を取り上げます。図表4のLow-E複層ガラスはガラスに「Low-E金属膜」がコーティングされたもののことです。Low-E金属膜は酸化銀や銀でできた金属膜で、ガラスに貼ることで熱が向こう側に伝わりにくくなります。

図表3. 通常の複層ガラス

通常の複層ガラス

 図表4. Low-E複層ガラス

通常の複層ガラス

図表5. 断熱タイプのLow-Eガラス構造

通常の複層ガラス

図表6. 遮熱タイプのLow-Eガラス構造

通常の複層ガラス

Low-E複層ガラスは室内側と室外側にコーティングすることで効果が変わります。図表5のタイプは、室内側でコーティングすることで断熱性が向上することから「断熱タイプ」と呼ばれています。一方、図表6のタイプは、室外側でコーティングすることで遮熱性が向上することから「遮熱タイプ」と呼ばれます。「断熱タイプ」はしっかり断熱しながらも太陽の暖かさを室内に取り組んでくれて、「遮熱タイプ」は断熱はもちろん、明るさを取り込みながらもガラスに当たる日射量を遮り、室内を涼しくしてくれます。

使い分けのポイントは窓の方角です。南向きの窓は断熱を重視しましょう。夏の昼間は太陽が高い位置にあるため、軒やひさしをつけることで直射日光は防ぐことができます。南向きの窓を断熱タイプのガラスにすることで、冬の低い位置の太陽からの日光を室内に保つことができます。西向きの窓には遮熱がよいとされています。西日は高度が低いため、軒やひさしでは遮りにくいので「遮熱タイプ」のガラスがおすすめです。特に暑い時期にはすだれやオーニング、シェードなどとも併用することで、さらに日射を遮るとよいでしょう。

複層ガラスには、寒冷地仕様としてさらに断熱性能を高めるために、ガラス3枚、中空層2つで構成された「トリプルガラス」というのもあります。また、中空層の中の気体を、空気より熱伝導率の低い「アルゴンガス」にしたり、熱対流が起こらない真空にしたものもあります。Low-E複層ガラスと真空層によって1枚ガラスの約4倍、一般的な複層ガラスの約2倍もの断熱性能が得らえると紹介しているサイトもあります。

すでに、新築住宅の窓ガラスの大半に複層ガラスが使用されており、2020年時点で戸建98.5%、集合住宅76.2%、Low-E複層ガラスでも戸建86.4%、集合住宅56.5%も採用されています。

断熱サッシへの取り換え

窓リフォームなどで1枚ガラスから複層ガラスに交換する際、サッシに複層ガラスが納まるかどうかを判断しなければいけません。複層ガラスにリフォームする際に窓のフレームに従来のものが使えれば1枚ガラスを複層ガラスに取り換えるだけのリフォームも可能ですが、同時にサッシごと取り替える「外窓交換」を選択する際には断熱サッシに取り換えるとより効果的です。

断熱サッシとは、室外の熱を室内に伝えにくいサッシのことをいいます。窓のフレームにはアルミ製、木製、樹脂製などがありますが、樹脂製(塩化ビニル樹脂)が最も熱を伝えにくく、冬の寒さが厳しい北海道では90%以上が樹脂製の断熱サッシを使用しているという統計結果もあるそうです。樹脂サッシにすることで室内の暖かさを逃がすことなく、室外の冷たい空気を室内に伝えにくくすることができ、断熱性、遮熱性、気密性に優れていて、結露も抑制します。アルミサッシの高い耐久性と、樹脂サッシの高い断熱性を兼ね備えた、窓の外側がアルミ、内側が樹脂でできている「アルミ樹脂複合サッシ」というのもあります。アルミ樹脂複合サッシはアルミサッシの1.5倍、すべて樹脂サッシで作る場合は、アルミサッシの2倍程度の費用がかかるそうです。

内窓(二重窓)の設置

内窓(二重窓)とは既存の窓の内側にもう1つ取り付けられた窓を意味します。複層ガラスがガラスの種類を指すのに対して、内窓は窓のタイプのことを指し、外側の窓と内側の窓といったように窓ガラスとサッシ枠を含めた窓そのものが2つあるタイプのことを言います。ですので、内窓のガラスの種類を選択することもできるので、断熱効果を上げるためには複層ガラスが入った内窓を設置することもできます。

内窓は、既存の窓の内側に新しく窓を設置するため、窓が2つ設置されたようになります。一般的には、外側の窓を「外窓」、内側の窓を「内窓」「インナーサッシ」といいます。外窓と内窓の間にできる空間(空気層)が、断熱効果を発揮します。内窓は、北海道?東北地方などの寒冷地で、凍ってしまう窓の対策として新築の段階から戸建?マンションを問わず採用されてきた工事方法で、最近では後から取り付けるリフォーム工事に採用されています。

DIYによる内窓(二重窓)の設置

内窓の設置を業者に頼むと数万円の費用が掛かってしまいますが、実は自分でDIYによって簡易的な内窓を設置することもできます。窓の内側に透明なポリカーボネートの内窓をつけるだけでも断熱効率がアップします。必要な工具や材料は特別なものはなく、NPO法人ECOフューチャーとっとり(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター)が主催した「DIY断熱ワークショップ」では、6,000円程度の材料費で簡易的な内窓を設置しています。もとの窓枠にレールを取り付けて内窓を差し込むだけなので、賃貸住宅でも退去時には簡単に取り外すことができ、簡単に原状復帰できるので、賃貸住宅のお住まいの方にお勧めです。

【用意した道具と材料】
  • カッターナイフ
  • セロハンテープ
  • 両面テープ
  • ポリカーボネート板(厚さ4㎜、サイズ1820×910mm)を2枚
  • レール(窓の横寸法の長さ、上下セット)
  • カブセ(コの字の断面のプラスチック製、ポリカーボネート板の外縁部にはめる。長さ:窓の縦寸法×4本)
総額:6,000円程度

手順は以下の通りです。

①内窓が設置できるかどうか確認する
内窓を取り付けるためには、窓枠にレールの幅以上の奥行が必要となる。目安はレールの幅の倍だけあれば、サッシの鍵の開け閉めも問題ない。レールの幅が17㎜とすれば、34㎜以上の奥行が必要となる。
内窓が設置できるかどうか確認
②窓枠のサイズを測る
奥行以外に、窓枠に取り付ける内窓のサイズを確認するために、窓枠の縦と横を測る。
※ガラス窓のサイズとは異なるので注意。
窓枠のサイズを測る
③レールを取り付ける
窓枠の上と下の部分にレールを貼る。まず、先ほど確認した窓枠の横の長さにレールを切って、切ったレールを仮置きして、レールの端に沿って鉛筆で窓枠に線を引く。その線を目印に両面テープを貼る。
※レールを仮置きする際には、窓枠の端から何㎝のところに置くか決めて、上下同じ奥行の位置にレールが取り付けられるように注意する。
次に、レールを取り付ける。レールには、上に取り付けるタイプと下に取り付けるタイプの2種類があり、レールの断面を見て、溝が深い方が上、浅い方が下に設置する。
レールを取り付ける
④内窓になるポリカーボネート板2枚分を内窓サイズに合わせて切断する
大刃カッターやハサミを使って、ポリカーボネート板を内窓のサイズに切る。内窓の横幅は、窓枠の横幅の半分の長さプラス1cmとする。縦幅は、窓枠の縦幅マイナス2mmとする。この縦長のサイズのポリカーボネート板2枚がスライド式の内窓になる。
ポリカーボネート板は中空構造になっており、その部分に線が入っているように見えるが、この中空構造が縦に並ぶように内窓を設置する。中空部分の断面は、構造的に弱くなるため、薄手のセロハンテープを貼って補強する。
内窓になるポリカーボネート板2枚分を内窓サイズに合わせて切断する
⑤ポリカーボネートの縦部分へカブセを取り付ける
内窓になるポリカーボネート板の縦部分には、セロハンテープで補強した上から「カブセ」と呼ばれる部材を取り付ける。この縦部分が、内窓として設置した時の左右側になる。
※横部分(内窓の上下)はレールに差し込むため、カブセは付けない。
内窓になるポリカーボネート板2枚分を内窓サイズに合わせて切断する
⑥ポリカーボネート板をレールに差し込む
カブセをつけたポリカーボネート板をレールに差し込む。先に奥側のレールに入れて、次に手前のレールに入れる。このとき、障子や襖を入れるときと同じ要領で、ポリカーボネート板の上側を上のレールに差し込み、少し持ち上げてから下のレールに差し込むようにする。
内窓になるポリカーボネート板2枚分を内窓サイズに合わせて切断する

簡単にできるその他の窓の断熱方法

簡単に実践できる方法としては、気泡緩衝材または断熱シートを貼るという方法があります。窓用断熱シートは、ホームセンターやディスカウントストアなどで販売されています。気泡緩衝材は片面だけフラットですが、窓用断熱シートは気泡層をナイロンシートで両面挟んだタイプで両面フラットです。どちらでも同じような効果が得らえます。

気泡緩衝材は冬の断熱対策として知られていますが、実は夏も外気熱を室内に通しにくくする、冷房で冷やした部屋の温度を保つ、というメリットがあり、1年を通して窓に貼ることで冷暖房の温度が安定し節電アップにつながります。さらに、災害時に窓ガラスが割れたときの飛散防止という効果もあります。
しかし、貼り方を間違えると窓からの冷気や室内温度の流出を防ぐことができないため、注意が必要です。そのための手順を紹介します。

  1. まず下準備として、窓ガラスやサッシ、サンに付着した汚れをキレイに掃除して、貼り付けた気泡緩衝材や断熱シートが剥がれないようにする。
  2. 隙間から冷気が入らないように、窓ガラスのサイズより少し大きめにカットする。
  3. 窓ガラスと室内の間に空気層を挟むことで断熱性を高めるため、気泡緩衝材を使う場合は凹凸面を窓ガラスに向けて貼る。
    ※空気層を作ることで、複層ガラスや内窓(二重窓)と同じように空気層を作って断熱効果を高める。
  4. 引き違い窓の場合、サッシとレールの間に隙間があるので断熱性を向上させるために、窓枠全体をカバーする。
    ※引き違い窓は窓ガラスとサッシ、レールを組み合わせた構造で、サッシとレールの間に僅かな隙間があるので、隙間風が入る。

一方で注意点もあります。気泡緩衝材や断熱シートをレール部分に貼り付けてしまうと、窓の開閉が難しくなります。ですのでカーテンのように窓全体を覆うようにするとよいでしょう。
また、窓にガムテープや両面テープで気泡緩衝材や断熱シートを貼ると、剥がした後にテープのベタベタが残ってしまいます。ひと手間かけて、簡単に剥がせるメンディングテープやマスキングテープを下地に貼って、その上に両面テープや屋外用テープなどを貼ると、気泡緩衝材や断熱シートが剥がれにくく、しかも撤去する際に剥がした跡が残らないのでお勧めです。また、気泡緩衝材や断熱シートはプラスチックなのでストーブがある近くでは引火や一部が溶ける可能性があるので注意しましょう。
気泡緩衝材や断熱シートを貼るという簡便な方法は低コストで、一定の断熱性が得られますが、窓に気泡緩衝材や断熱シートを貼ることで室内が暗くなったり、外の景色が見えにくくなったり、温度差によって結露してカビが生えやすくなるなど、デメリットもあります。より高い断熱性と快適性を求めるなら、複層ガラスや内窓のリフォームを検討することをお勧めします。

窓の断熱によるCO2削減効果

認定特定非営利活動法人環境ネットワーク埼玉/埼玉県地球温暖化防止活動推進センター「スマートライフ~省エネのすすめ~」は、二重窓を設置すれば、年間133kg、単に窓にビニールフィルムを貼るだけでも年間32kgのCO2削減が可能になるという試算をしています※。

※この数値は埼玉県で平成23~24年度に「うちエコ診断」を行った診断データのうち埼玉県内在住の484件分を統計的に処理したものです。

国際環境経済学科4年 日野原