『たむら市政だより』2025年1月号 フード?マイレージの計算方法や削減に向けた取り組みについて

『たむら市政だより』2025年1月号 フード?マイレージの計算方法や削減に向けた取り組みについて

2025年1月8日

『たむら市政だより』1月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol. 17「地元産の食材をもっと取り入れてみませんか」に記載したフード?マイレージの計算方法や削減に向けた取り組みについてご紹介いたします。まずフード?マイレージの概要について説明していきます。

フード?マイレージの概要

フード?マイレージとは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標のことで、食料の輸入が地球環境に与える負荷を把握することができます。図表1は2001年の輸入食料に関する国別フード?マイレージを比較しており、以下の式より品目別に試算したものを足し合わせたものです。

フード?マイレージ(t?km)=食料の輸送量(t)×輸送距離(km)

日本は世界的に見てもフード?マイレージが高く、特に穀物が高いです。日本の穀物はほとんどが輸入に頼っており、2020年の穀物需要が約3,300万トンとされていますが、そのうち約2,400万トンを海外から輸入しています。穀物を最も生産できていた昭和30年代後半から40年代頃の生産量は合計1,600万トンで、農地は600万haと今の1.5倍以上だと言われています。最も生産ができていた時でも今の需要量の半分も生産できていないことから、輸入に頼らざるを得ないのが現状です。

図表1. 各国のフード?マイレージの比較(品目別)
冬季と夏季の熱の流入と流出

フード?マイレージが高い理由は、食料の多くを輸入に頼っていることや、輸送距離が長いことです。日本は、島国であり海上輸送で距離が長いためフード?マイレージが高くなっています。
輸入の現状は日本の食料自給率からも見て取れます。図表2は日本と諸外国の食料自給率を表していますが、日本はカロリーベースでは38%であり、諸外国に比べて低くなっています。

図表2. 日本と諸外国の食料自給率の比較
冬季と夏季の熱の流入と流出

おせち料理に使われている「大豆」と「くるまえび」の自給率

記事内で大豆の食料自給率は、農林水産省の「2024欧洲杯投注官网_沙巴博彩公司-官网平台5年度 食糧自給表」より大豆の国内生産量261tと国内消費仕向量3,562tを以下の式より約7%と試算しました。

食料自給率=国内生産量÷国内消費仕向量

また、少々古いデータですが、日本の大豆の需要量のうち食用大豆は30%です。食用大豆のうち国産は全体の24%になります。そのため、日本の大豆の需要量全体のうちの食用大豆の自給率の割合は約7.2%と試算されます。

図表3. 2014年度の大豆の需要量と国産大豆の割合
冬季と夏季の熱の流入と流出

一方、えび類の自給率、くるまえびの自給率については、「食料需給表」を見ても掲載されていません。そこで、農林水産省が作成し、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」公式ウェブサイトに掲載している、料理の自給率を簡単に計算できるソフト「やってみよう!自給率計算」を使ってみました。

「やってみよう!自給率計算」

このソフトを開いて、「献立に料理を追加する」をクリックして、例えば「シーフードドリア」と入力すると、「くるまえび」の品目別食料自給率は約4%と表示されます。同様に、寿司(にぎり)や天ぷら、パエリアに使う「あまえび」、スパゲッティ(シーフード)に使う「しばえび」についても品目別食料自給率4%と表示されるので、えび類の自給率を一律に使っていると思われます。ただし、このソフトの計算には2024欧洲杯投注官网_沙巴博彩公司-官网平台3年度「食料需給表(概算値)」のデータが用いられているとありますが、「えび類」の自給率は掲載されていません。
エムアール環境計画「車海老養殖の強み」によると、くるまえびの自給率はえび類の自給率よりも、低いとのことでした。

日本のフード?マイレージの取り組み

記事内では、フード?マイレージを低く抑える方法として地産地消を挙げましたが、その他にできることと日本企業の取り組みについて以下にまとめました。

図表4. フード?マイレージを減らす方法と取り組み事例
  効果 企業?自治体の取り組み
①国内の食材を購入する
  • 海外からの輸入食材ではなく、国産のものを優先的に購入することで、フード?マイレージを抑えることができる。
  • 消費者が国産を選ぶと、国産の食材を扱うお店が増え、生産者やその地域の応援にも繋がる。
企業名:オイシックス
  • 品質の高い国産の旬の野菜や有機農産物の宅配サービスを行う。
  • 配送車のEV化にも取り組む。
②地産地消
  • その地域で作られたものを、その地域で消費することで食料の輸送距離を短縮でき、環境負荷を軽減できる。
  • 近くで生産されたものを販売することで仲介の流通を省くことができ生産者の収入アップにも繋がる。
自治体:富山県
  • 「食べトクとやま」という地産地消を応援するアプリを開発、県産の食材の旬の情報や直売所のイベント情報などを発信する。

解決策として国内の食材を購入したり、地産地消を意識することを示してきましたが、根本的な解決策として国内の農業の生産拡大が必要です。現在では生産拡大に向けてロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用した「スマート農業」が拡大しており、農林水産物?食品の輸出額や農業所得が増加傾向にあります。

フード?マイレージ課題に向けた福島県の取り組み

福島県では「ふくしま大豆の会」という福島県産の大豆を安全性や美味しさを広める活動をしてる団体があります。日本の大豆の輸入先1位のアメリカ産と福島県産とで豆腐1丁あたりのCO2排出量を比較したものが図表5です。大豆の会で扱っている商品のCO2削減量については図表6に示したとおりです。

輸入先の商品を購入すると輸送にかかるCO2排出量が増えてしまうため、食品を購入するときは産地を意識した買い物を心がけましょう。

図表5. 豆腐1丁当たりのCO2排出量の違い
輸送形態 排出係数 アメリカ産大豆 福島県産
(会津産)大豆
輸送距離
(km)
1丁当たりCO2
排出量(g)
輸送距離(km) 1丁当たりCO2
排出量(g)
アメリカ陸送(鉄道) 21 1,300 2.5 0 0
太平洋海運(船舶) 38 18,585 64.2 0 0
国内陸送(トラック) 167 264.9 4 90.8 0
合計     70.7   1.3
図表6. ふくしま大豆の会商品のCO2削減量
豆腐
納豆
みそ
しょうゆ
あぶらあげ
寄せ豆腐

国際環境経済学科4年 丹野