2007 学生懸賞論文入賞作品(2編)
入選
該当作なし
佳作
「高校生の野球特待制度問題」
法学部法律学科3年 斉藤 健一郎 要旨はこちら
「ヒートアイランド現象と屋上緑化」
経済学部経営学科4年 藤森 奈美子 要旨はこちら
<佳作>
「高校生の野球特待制度問題」
法学部法律学科3年 斉藤 健一郎
本論文は、いわゆる"高校生の特待制度問題"を、主に教育法?スポーツ法的見地から考察を加えた。その場合、①日本高野連は如何なる権限に基づき野球特待制度を禁止していたのか、②野球特待制度の禁止を強制したことはかかる権限の正当な行使と認められるのか、が論点となる。そして、①については、スポーツ法原理としての「スポーツの私的自治の原則」により権限の基礎付けをなし得るところであるが、②については、日本高野連が野球特待制度を禁止した最大の目的として、特待制度の存在により高校野球活動と金銭的利害とが深く結び付いてしまい、野球部員たる高校生の教育に悪影響が及ぶおそれが挙げられるところ、かかる教育に関する判断は、学校外部の決定が学校に強制されてはならず(教育基本法16条1項)、現に多くの学校では野球特待制度が認められてきたことからすれば、日本高野連による禁止の強制はその権限の正当な行使とは認められない、と本論文は結論付けた。
<佳作>
「ヒートアイランド現象と屋上緑化」
経済学部経営学科4年 藤森 奈美子
2007年の夏は74年ぶりに最高気温の記録が塗り替えられた。北日本では平年差+10℃以上の日もあり、地球温暖化、異常気象と共にヒートアイランド現象という言葉をニュースで耳にする日が絶えなかった。そこで、ヒートアイランド現象とは何なのかを調べてみようと考えた。
ヒートアイランド現象とは都市の熱大気汚染現象であり、原因は人口排熱の増加と緑地の喪失にあることが分かった。この現象は都市部の温度上昇のほかに局地的な集中豪雨や熱中症の発生にも影響を与えている。ヒートアイランド現象の抑制方法として挙げられているのが緑化である。東京都を47%緑化すれば、真夏の猛暑でも4℃気温が下がる、と言われている。高密度都市部に新たな緑地を造成することは容易ではない。そこで、注目されている1つの手法が建物の屋上緑化であった。
今はまだ、屋上緑化には維持管理と費用面で問題点がある。それらを解決しながら都市に緑を広げていくことがヒートアイランド現象の解決となり、ひいては地球温暖化問題の対策として挙げられる二酸化炭素排出量削減方法のひとつとなるのではないだろうか。
審査委員長 講評
藤田 永祐
今回のコンテストには17編の応募がありました。「テーマ課題」と「自由課題」の二種類あって、「テーマ課題」の方は「健康に生きる」、「インターネットカフェ難民をどう考える」、「高校生の野球特待制度問題」、「三角合併解禁と買収防衛策導入のあり方」と、一編ずつ計4編寄せられ、「自由課題」の方は13編寄せられました。
佳作に選ばれた斉藤健一郎君の論文「高校生の野球特待制度問題」は、この問題を「特殊社会関係」との交錯という観点から考察しています。高校野球はスポーツと学校教育それぞれに存在する「特殊社会関係」が交錯していて、この「高校生の野球特待制度問題」は学校内部の問題であると同時に、日本高野連が関るスポーツに特殊的な問題でもあるとする。この問題は、そこから生じる相互矛盾する二つの要請に原因し、それに対する斉藤君の結論は、「各学校の教育専門的判断」の方が優越すべきとするのだが、文章は丁寧で、判断に至る法論理の展開に見るべきものがあります。
努力賞の論文として藤森奈美子さんの「ヒートアイランド現象と屋上緑化」(自由課題)が選ばれました。ヒートアイランド現象を藤森さんは、(1)ヒートアイランド現象とは、(2)その発生原因、(3)ヒートアイランド現象が引き起こす事態、(4)その抑制、(5)抑制方法である屋上緑化、と論を進めています。論旨は分かりやすく説得性もありますが、感想文に類するくだりを整理して、考察にさらに広がりまたは深みを加えることができれば優れたものになるでしょう。ある問題を論ずる際、ある主張をする際、法的に、社会的に、関係する諸般の事柄への配慮が不可欠となりますが、その点が不十分で賞を逃した論文があるのは惜しまれます。